膜性腎症のお話

特発性膜性腎症:up to date・・・腎臓病雑誌より抜粋(一部改変)

はじめに
特発性膜性腎症とは、糸球体基底膜上皮下に形成される抗原抗体複合体により活性化された補体によるポドサイトの傷害が原因となる糸球体腎炎であり、40歳以上のネフローゼ症候群患者の約35%を占める。膜性腎症は約30%が自然寛解し、30%がステロイドや免疫抑制薬にても不完全寛解I型に至らない難治性ネフローゼ症候群をきたす。・・・原因抗原に関しては2009年にM型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)が原因抗原であると報告された。
・・・
特発性膜性腎症の抗原
1. Neutral endopeptidase (NEP)
2. PLA2R
3. SOD2, aldose reductase

図:特発性膜性腎症の抗原とポドサイトでの発現部位

a. Heymann腎炎の抗原であるメガリン(FxA-1,gp330)は、ポドサイトの足突起部分に発現しており、抗体は糸球体ポドサイトの直下に免疫複合体が産生される。
b. NEPは、顆粒球、合胞体栄養細胞、ポドサイトを含む上皮細胞、好中球に発現している。・・・NEPに対する抗体が原因になって、ポドサイトのNEPと結合し、免疫複合体を形成し膜性腎症を起こす。
c. PLA2Rは肺、顆粒球、ポドサイトに発現しており、70%の特発性膜性腎症患者においては、抗PLA2R抗体が血中に検出でき、ポドサイトに発現するPLA2Rと結合して膜性腎症ができる。

・・・膜性腎症は、中高年に発症するネフローゼ症候群の原因の第一位を占め、慢性の経過で発症して持続性蛋白尿からネフローゼ症候群に進展する。腎組織では腎糸球体基底膜の外側に沿って、IgGと補体成分C3の免疫沈着物が顆粒状に沈着することを特徴とする。これに続いて顆粒状の免疫沈着物の間に、従来の糸球体基底膜から連続するように新たな基底膜が生成されて、糸球体基底膜のスパイク病変と肥厚が起こる。腎糸球体基底膜に沿う免疫沈着物の出現に伴って、腎糸球体上皮細胞の足突起に融合と消失が、さらに細胞間スリット膜にも形態変化が起こり、これに伴って大量の蛋白尿が出現する。

・・・JRBRのデータでは、日本におけるネフローゼ症候群のうち、一次性糸球体疾患58.2%. IgA腎症5%, 二次性腎疾患では、糖尿病性腎症9.9%, ループス腎炎6.1%, アミロイド腎4.2%であった。IgA腎症を含まない一次性糸球体疾患の病型分類では、微小糸球体変化(微小変化型ネフローゼ症候群)が40.7%, 膜性腎症36.8%、巣状分節性糸球体硬化症11.5%, 膜性増殖性糸球体腎炎(I型、III型)5.5%であった。
・・・膜性腎症のうち一次性は77.9、二次性の主な疾患は、ループス腎炎(V型)9.1%, 薬剤性1.7%, 感染症(HBV,HCV, Syphilis, HIV etc)1.2%,悪性新生物あるいは血液疾患(前立腺癌・膵臓癌・骨髄移植・MGUS・IgG4関連)1.0%、その他の膠原病0.9%。

二次性膜性腎症
・・・腎生検で基底膜のバブリング像、スパイク形成などの光顕所見と蛍光抗体法で基底膜に沿ったIgGの顆粒状の沈着があれば、膜性腎症と診断している。明らかな疾患の合併がない場合を一次性膜性腎症とし、合併がある場合を二次性膜性腎症と呼んでいる。ただし、膜性腎症の像を呈するモノクローナル性免疫グロブリン沈着症(monoclonal immunoglobulin deposition disease: MIDD)も報告されており、膜性腎症と診断する際には、蛍光抗体法で重鎖だけでなく、軽鎖の沈着も評価しMIDDを除外する必要がある。

膜性腎症の診断とmonoclonal immunoglobulin deposition disease (MIDD)の除外
 免疫グロブロン異常症をdysproteinemiaと呼んでいるが、最近、糸球体に沈着している免疫グロブリンが単一成分の場合があることが判明した。特にモノクローナルIgGが沈着しメサンギウム増殖がある場合を,proliferative glomerulonephritis with monoclonal IgG deposits (PGNMID)と称している。しかし、IgGに限らず、IgA,IgMでも結節性病変、MPGN様病変などの糸球体病変が生じることがあり、これらをlight chain and heavy chain deposition disease (LHCDD)と称している。
 さらに、膜性腎症と同じ病理組織型を示すmonoclonal immunoglobulin deposition disease (MIDD) with membranous features (IgG1-κ, IgG3-κ, IgA1-λ)が報告されている。もし蛍光抗体法で軽鎖を検討しなければ、これらは膜性腎症と見過ごされていしまう可能性がある。MIDD with membraneous featuresの発生頻度は0.1%程度ときわめて低いが、これらdysproteinemiaによるものを除いて初めて膜性腎症と診断できることになる。


一次性膜性腎症と二次性膜性腎症の差異

一次性の場合、メサンギウム増殖はほとんどなく、分葉化あるいは分節性病変もないことが多い。一方、二次性では、軽度のメサンギウム増殖を伴う場合や分節性硬化、糸球体多核白血球浸潤がみられる。蛍光抗体法では、一次性でIgG4が優位であるが、二次性ではIgG1, IgG2がIgG4と同等あるいはそれ以上になることが多い。電子顕微鏡所見における高密度沈着物は、一次性ではほとんどが上皮下沈着(subepithelial deposit)と基底膜内沈着(intramembraneous deposit)であるのに対し、二次性ではしばしばメサンギウム沈着(mesangial deposit)や内皮下沈着(subendothelial deposit)を伴っている。

IgGが糸球体基底膜を通過するメカニズム

糸球体基底膜には、サイズバリアとチャージバリアがあり、アルブミン(分子量6万)以上の大きな物質は糸球体基底膜を通過しにくいとされている。この原則を破ってIgGが基底膜の上皮側に沈着していることに関して、いくつかの考えがある。
1. IgGのサブクラス
血清IgGサブクラスは、IgG1 900mg/dl, IgG2 300mg/dl,IgG3 150mg/dl, IgG4 50mg/dlであるが、血中濃度が最も低いIgG4が一次性膜性腎症の糸球体基底膜上皮側に優位に沈着している。このことは、IgG4が膜性腎症の発症機転に大きく関与していることを示唆している。一方、関節リウマチに対する治療薬としてのブシラミンによる二次性膜性腎症では、IgG1, IgG2がIgG4と同等あるいはそれ以上に強く糸球体基底膜に沈着している。さらに、悪性腫瘍関連の二次性膜性腎症でも同様の所見が得られている。すなわちIgG1, IgG2がIgG4と共存している場合は、二次性膜性腎症の可能性が高くなる。
2. Neonetal Fc receptor
IgGが胎盤を通過する際には、neonatal Fc receptor (FcRn)が使用されている。FcRnは胎盤以外に腸管の細胞、肝細胞、糸球体内皮細胞、糸球体上皮細胞、尿細管上皮細胞のbrush borderにも発現している。糸球体上皮細胞のFcRnは、基底膜を通過したアルブミンとIgGの糸球体での処理に関与している。一方、尿細管上皮細胞のFcRnは、糸球体を通過したアルブミンとIgGの再吸収を行っている。膜性腎症との関連については現時点で不明である。
糸球体基底膜を通過したIgGが上皮側に沈着するメカニズム
1. In situ immune complex formation
IgGと抗原が結合した循環免疫複合体は、当然IgGの分子量より大きなものであるのが想定される。このような巨大分子が基底膜を通過して上皮側に沈着することは考え難い。そこで、抗原と抗体が別個に基底膜を通過し、基底膜上皮側の局所で免疫複合体が形成するメカニズムが提示された(in situ immune complex formation)。抗原としては、陰性荷電の基底膜と反応しやすい陽性荷電物質であることも推定されている。一方で、糸球体上皮細胞が産生する物質が抗原の候補としてもあげられてきた。
2. 抗原の解析
1) α-enolase
1999年にWakuiらは、膜性腎症の患者血清中に膜性腎症の患者腎臓組織と反応するIgG抗体を検討し、対応する抗原としてα-enolaseであることを見出した。α-enolaseは、多くの生物に共通する糖分解酵素の一つであり、解糖以外の多様な働きを有している。Heat shock protein familyの一つであり、温度耐性、成長に関与している。また、微生物の細胞膜表面に存在しplasmin(ogen) binding protein でもあり、組織侵襲とも関連している。一次性膜性腎症では、抗α-enolase抗体は約70%で陽性であり、二次性膜性腎症でも約60%に陽性になる。膜性腎症以外に各種自己免疫疾患(血管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性硬化性胆管炎、肺胞蛋白症)患者でも検出されている。最近ではシトルリン化したenolase蛋白に対する自己抗体が関節リウマチ患者で高頻度に出現することから、病態への関与が示唆されている。膜性腎症では、糸球体に沈着するIgGのサブクラスはIgG4が主体であるが、血中に存在している抗α-enolase抗体のサブクラスはIgG1とIgG3が主体であり、この食い違いを説明できていない。
2) Neutral endopeptidase
Neutral endopeptidase (NEP)(neprilysin, enkephalinase, CD10, EC3.424.11)は、90-110kDaの亜鉛依存性metallopeptidaseであり、common acute lymphoblastic leukemia antigenとして同定されている。脳組織、多核白血球、リンパ球に存在し、腎臓、肝臓、肺の上皮細胞にも発現することがわかっている。この酵素の働きは、制御ペプチドの代謝に関連し、細胞表面でのシグナルの除去に関与している。腎臓では、尿細管のbrush border、糸球体上皮細胞、血管平滑筋細胞に発現している。・・・
  3)M-type phospholipase A2 receptor
2009年にBeckらは、一次性膜性腎症の患者の約70%にM-type phospholipase A2 receptor (PLA2R)に対するIgG4抗体があることを報告した。・・・正常の糸球体上皮細胞表面し存在している。
4) Aldose reductaseとMn-SOD2
2010年にPrunottoらが、aldose reductase (AR)とMn-SOD2(SOD2)が一次性膜性腎症の抗原となることを報告した。通常ARとSOD2は尿細管に発現しているが、糸球体内には存在していない。何らかのシグナルがあった際に糸球体上皮細胞で過剰産生されたARとSOD2に対してIgG4抗体が基底膜で免疫反応を起こすことが示された。・・・二次性膜性腎症ではARやSOD2の発現はごく軽微である。
5) 膜性腎症の抗原についてのまとめ
PLA2R, AR, SOD2はいずれも一次性膜性腎症での意義が強調されている。一方、α-enolaseは二次性膜性腎症でも約60%で陽性となる。特に細菌の細胞表面に存在し、プラスミノーゲン結合性、フィブロネクチン結合性を有しており、生体に感染、侵入する際に重要な因子となっている。また、α-enolaseとc-mic結合蛋白の遺伝子は同一遺伝子からできており、悪性腫瘍からも産生されることがわかっている。これらの発現によって免疫系が賦活されることも予想されている。一つの抗体を有する患者が他の抗体を有するかについては、不明な点が残されている。

  二次性膜性腎症を起こしやすい疾患
1. 自己免疫疾患 (autoimmune disease related MN)
全身性エリテマトーデス(SLE)では、特にV型として分類されている。混合性結合組織病 (MCTD)、Sjogren症候群でも合併することがある。関節リウマチ (RA)自体でも膜性腎症が起こりうるが、後述するようにブシラミン、D-ペニシラミン、金製剤などの薬剤使用によっても生じる。
2. 造血幹細胞移植後腎症 (chronic GVHD related MN)
造血幹細胞移植後腎症は、120日以内に急性腎不全になる場合と、180日以降にネフローゼ症候群や慢性腎不全を発症する場合がある。ネフローゼ症候群を呈する患者の半数は膜性腎症である。
3. 薬剤 (drug related MN)
関節リウマチに使用されるブシラミン、D-ペニシラミン、金製剤以外に、TNF-α阻害薬 (エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリマリブ)でも発症することが報告されている。・・・NSAIDsとしてジクロフェナクが多く報告されているが、おそらくCOX-2阻害薬を含むすべてのNSAIDsで発症する可能性があると思われる。環境因子として、水軍中毒、ホルムアルデヒドへの慢性暴露での報告もみられる。
4. 感染症 (infection related MN)
B型肝炎ウイルス(HBV)では、小児あるいはキャリアでの膜性腎症の発症が多い。HBS抗原の重要性あるいはHBe抗原と抗HBe抗体の反応の重要性が報告されている。電顕では、virus-like particleが基底膜内にみられたり、メサンギウム領域でのelectron dense depositがみられたりする。血清学的にはトランスアミナーゼは正常ないしやや高いが、seroconversionによってネフローゼ症候群が軽快することもある。C型肝炎ウイルス (HCV)では、クリオグロブリン関連膜性増殖性糸球体腎炎の頻度が高いが、それ以外に、IgA腎症、ときに膜性腎症も生じる。細菌感染症としては、Actinomyces, Helicobacter pylori, 梅毒なども知られている。また、マラリア、フィラリア、住血吸虫症の報告もある。
  5.悪性腫瘍 (malignancy related MN)
膜性腎症と診断された患者の5-22%(特に65歳以上)には悪性腫瘍が合併することが知られている。主に固形癌(肺、腎臓、消化管など)であるが、胸腺腫でも生じる。また、血液悪性腫瘍で発症することもある。特に、糸球体内に多核白血球浸潤が多い場合は悪性腫瘍関連膜性腎症の可能性がある。また、膜性腎症の数年以内に腫瘍が顕在化することもあり注意が必要である。
  まとめ:二次性膜性腎症のアプローチ
1) 光顕所見で、基底膜の変化とともにメサンギウム増殖、分葉化、分節性硬化、糸球体多核白血球浸潤がある場合は、二次性の可能性が高い。
2) 蛍光抗体法で重鎖と同時にκ鎖、λ鎖を検討し、monoclonal immunoglobulin deposition disease with membraneous featuresを除外する必要である。
3) IgGサブクラスの検討:IgG4単独あるいは、IgG4優位の沈着であれば一次性の可能性が高い。IgG1,IgG2が優位の沈着の場合は二次性の可能性が高い。
4) 電顕所見でmesangial depositやsubendothelial depositがある場合は、二次性の可能性が高い。
5) 二次性の可能性が高い場合は、自己免疫疾患、感染症、悪性腫瘍をチェックする。腎生検時点で合併していない場合でも、数年後に発症することもあるので注意して観察する。

 表1  一次性膜性腎症と二次性膜性腎症の差異
一次性:
光顕所見:メサンギウム増殖なし、分葉化なし、分節状硬化なし
       蛍光抗体法:IgG4優位
       電顕所見:Subepithelial deposit優位
            Intramembraneous depositsも存在
   二次性:
光顕所見:ときにメサンギウム増殖あり、分節状硬化あり、多核白血球浸潤→悪性腫瘍関連が多い。
蛍光抗体法:IgG4以外にIgG1, IgG2が強陽性
電顕所見:Mesangial depositやsubendothelial depositも存在

二次性膜性腎症:膜性ループス腎炎をめぐる話題

ループス腎炎(lupus nephritis:LN)は、全身性エリテマトーデス (systemic lupus nephritis:SLE)による腎障害である。SLEのうちLNの発症頻度は50-60%という報告が多い。・・・LNの組織分類のなかで膜性ループス腎炎 (membraneous LN:MLN)はclass Vになる。

膜性ループス腎炎の発症頻度
 多彩なLNの組織型のうちMLNの発症頻度は、報告では8-23%であり、平均15%程度と認識されていることが多い。

膜性ループス腎炎の病理組織学的変遷と臨床像
 上皮側沈着優位でMLNと分類された組織型の腎予後(5年腎生存率)は、軽微なLNの組織所見のLNと変わりない。
以下Wikipediaより抜粋・・・一部改変
1974年:ループス腎炎WHO組織分類:membraneous lupus nephritis class V
1982年:ループス腎炎WHO組織分類:membraneous lupus nephritis class V a,b,c (III), d (IV)
1995年:ループス腎炎WHO組織分類:membraneous lupus nephritis class V a,b
2003年:ISN/RPS新しいループス腎炎組織分類:membraneous lupus nephritis class V (pure and minimally proliferative)
Class V+III, class V+IVを分けて分類する。
Class I 組織所見normal, 臨床症状:尿蛋白陰性、予後: 良好
Class II 組織所見 mesangial alteration メサンギウム基質・細胞の増加。臨床症状:尿蛋白陰性〜軽度陽性、尿潜血陰性〜軽度陽性。予後: 時にIV型への移行あり、腎不全への進行は稀。
Class III 組織所見 focal GN segmentalな細胞増加、メサンギウムおよび内皮下への免疫複合体の沈着。臨床症状:持続性蛋白尿、軽度血尿、ネフローゼ症候群は稀。低補体血症、抗DNA抗体上昇。予後: IV型への移行あり、腎不全への進行は多くない。
Class IV 組織所見 diffuse proliferative GN
a) Segmentalな病変(-)
b) 活動性壊死性病変(+)
c) 活動性、硬化性病変(+)
d) 硬化性病変
50%以上の糸球体におけるglobalおよびsegmentalな細胞増加・壊死・細胞性半月体、メサンギウム・内皮下(さらに上皮下)への免疫複合体の沈着。臨床症状:中程度からネフローゼ・レベルの蛋白尿、沈査にて赤血球円柱・細胞円柱、低補体血症、抗DNA抗体高値。予後:腎不全への進行が多い、治療によりII,V型へ移行することがある。
Class V 組織所見 diffuse membraneous GN
 係蹄壁の肥厚、メサンギウム、および上皮下の免疫複合体沈着。臨床症状:主にネフローゼ・レベルの蛋白尿、血尿も認めることが多い、低補体血症、抗DNA抗体高値。予後:腎不全への進行は少ない。
Class VI 組織所見 advanced sclerosing GN
糸球体硬化、尿細管委縮、間質の線維化、免疫複合体の沈着はない。臨床症状:中等度蛋白尿・腎機能低下。予後:腎不全に至る。
                   
1982年のWHO臨床分類のLN組織分類では、class V a,b,c,dと再分類され、これらをMLNと記載している。この分類は、新しいISN/RPSのLN組織分類での、class Vはclass Va,bに相当し、class V+class IIIはclass Vcであり、class V+class IVはclass Vdに相当するのではないかと考えられる。MLNも他の組織型と同様、臨床的にSLEの分類基準を満たさないとLNと病理診断はできない。病理学的に特発性膜性腎症と比較してみると、よりMLNに近い蛍光抗体法所見のC1q沈着や、IgGサブクラスの沈着パターン、電顕的に、内皮細胞内のvirus-like particleの存在、メサンギウム領域へのelectron dense depositや上皮側沈着物の大小不同の傾向などを認めていても、SLEの臨床診断ができていないとMLNと病理組織診断を下すことはできない。つまり、このようにMLNが組織学的に最も疑われる場合でも、病理所見として「MLNが疑われる」との記載にとどまる。増殖性活動性病変を伴うclass V+class III とclass V+class IVにclass V+class IVを加え一つのグループとしclass Vのグループと比較検討した。結果は、class V+class IV群の方が、年齢が高く、高血圧やネフローゼ症候群をきたす頻度も高く、血尿の程度も強かった。腎機能の低下も有意であったが低補体血症の出現の頻度に差はなかった。
 最も多い発症様式は、SLEと診断した時点で、LNも発症しているパターン(同時期発症型)である。ときに、SLEと診断した時点ではLNは認めず(尿異常がない)経過中にINが加わってくる場合もある。MLNにおいては、尿異常やネフローゼ症候群で発症し、その時点ではSLEの分類基準を満たさず、SLEの診断に至らない場合がしばしば見受けられる。・・・ネフローゼ症候群で発症時、臨床的には、二次性の膜性腎症(membraneous nephropathy:MLN)を疑わせる検査異常がみられなくても、再発時にSLEと診断がつく場合もある。MLNではこのような発症パターンが高頻度である。このように腎炎再発時などに、SLEとしての徴候・検査異常が現れ診断が確定し、この時のネフローゼ症候群がMLNによるものと診断できるタイプが多い(SLE発症遅延型)。MLNの臨床的特徴を種々の報告からまとめてみると、
1) 抗dsDNA抗体が陰性かあるいは低値
2) 健診で見つかる頻度が高い
3) 低補体血症の頻度が低い
4) ネフローゼ症候群を示していても腎機能の低下が少ない
5) 血尿を認めるが、血尿の程度が軽度である、・・・etc

膜性ループス腎炎の予後
近年MLNの生命予後、腎予後の改善が著しい。・・・長期15年のLNを検討した検討した報告では、びまん性ループス腎炎は比較的寛解率がよいが、むしろMLNは寛解率が低く、腎予後もびまん性ループス腎炎同様不良であった。MLNの腎予後不良の要因の一つに蛋白尿持続があげられるようになってきている。短期的には、腎機能の低下がないことは、特発性、二次性にかかわらず膜性腎症に共通した所見であるが、MLNの場合、免疫学的に活動性が低く、腎機能低下のない組織型であっても、治療を軽減してはいけない。特に、腎生検を実施し、class Vにclass IIIやclass IVのような活動性の高い増殖性の高い病変が加わったり、間質病変を認めたり、組織型の移行(2回腎生検を行った場合)などの所見があれば、より治療薬の選択を適正に行い、持続する蛋白尿の消失に注意を払う時代になったといえる。長期にわたる毒性の低い蛋白尿の減少・消失(寛解)維持をターゲットにした治療で、MLNの生命・腎予後のさらなる改善が期待できる。
膜性ループス腎炎における治療の動向
びまん性ループス腎炎はLNの代表的な組織型であり、腎予後不良の象徴であったが、最近の治療の進歩により、腎予後の改善は著しい。2008年、本邦においてもタクロリムスがLNの保険適用になり、ひろくいずれの組織型にもかかわらずLNに使用されるようになった。アジアを中心とした諸外国でも本邦の報告でも、頻度の点からもびまん性ループス腎炎を中心に使用されていることが多い。短期的には、蛋白尿減少に効果があり、従来行われてきた維持療法、標準治療やRAS系阻害薬 (アンジオテンシンII変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬)使用でも抵抗性の蛋白尿に効果を認めている。・・・MLNに対して、アザチオプリンまたは経口シクロフォスファミド投与のコントロール群とタクロリムス使用群との比較検討を行い、12週間で尿蛋白の完全あるいは不完全寛解率に差はなかったが、6か月目の尿蛋白減少率(76% vs 46%)に有意差が認められ、再燃率にも差がみられたとの報告もある。

膜性ループス腎炎をどう治療していくべきか
LNの治療は、寛解導入と維持療法に分けられるようになってきている。・・・
MLNの治療は、抗dsDNA抗体が低く、免疫複合体の除去を目的に行う血漿交換療法の機会も少なく、腎機能の悪化の阻止を急速に行うことも少ない。しかし、class V; class III, class V+class IVではネフローゼ症候群を示し、10%が腎不全に移行すると言われている。尿蛋白の少ないMLNの場合、RAS系阻害薬を適切に使用し、心血管系のイベントのリスクを下げることも重要である。ネフローゼ症候群を示すようなMLNの治療は、特発性膜性腎症の治療に準じ、さらに、class V+class IVでは、カルシニューリン阻害薬にMMFの併用がよく、基本にステロイド薬を使用しつつ低用量・短期間のシクロフォスファミド静注療法の併用やアザチオプリンも使用しながら、寛解導入をはかり、MMFやアザチオプリンでの維持療法に移行すべきとしている。LNの組織型により臨床病態は異なるが、本邦においては基本的なステロイドパルス療法や副腎皮質ステロイド以外の免疫抑制薬の併用は、比較的腎機能が落ち着いているMLNでも、びまん性ループス腎炎と同等に行い、LNの保険適応になっていつカルシニューリン阻害薬のタクロリムスとプリン代謝拮抗薬であるミゾリビンを併用し、効果的に寛解導入を図るべきである。その後の維持療法も、MLNをびまん性ループス腎炎でも変わりなく、長期的に見て、尿蛋白の持続は腎不全への移行の危険因子であることは間違いないので、MLNの治療においても、長期的治療方針を打ち立て、尿蛋白消失の寛解維持療法、そして、再燃しない、毒性が低く安全な薬物を選択し、長期にわたるコントロール治療を行うべきである。

診療指針よりみた特発性膜性腎症の治療と予後

はじめに
膜性腎症は代表的な糸球体疾患であり、他の疾患に併発する二次性のものも少なくないが、その多くが腎に原発し原因が不明ないわゆる特発性である。この特発性膜性腎症の特徴は、主として高齢者にみられ、治療が難しいネフローゼ症候群を呈することであり、これまでも治療に関する多くの研究が国内外でなされてきた。・・・以下略

膜性腎症の予後と治療効果
欧米でもわが国でも、特発性膜性腎症のうち約30%では蛋白尿が高度ではなく、ネフローゼ症候群を呈するには至らない。これらの多くを含め、ステロイドや免疫抑制薬を使用しなくても寛解に至る自然寛解例が、膜性腎症の20〜30%にみられるといわれている。このためネフローゼ症候群を示さない場合は、後述のような降圧薬や脂質異常改善薬によるいわゆる補助療法が勧められてきた。一方、ネフローゼ症候群を呈する場合には、尿蛋白減少をもたらす治療への反応が、長期予後の改善にも重要であると考えられるが、わが国では、ステロイド単独投与でも治療に反応する例が多いと報告されてきたのに対し、欧米では、無作為化比較試験(RCT)の結果でステロイド単独療法の有効性が否定されているとの見解から、免疫抑制療法開始時よりステロイドと免疫抑制薬の併用療法が推奨されている。免疫抑制薬としてはアルキル化薬であるクロラムブチルの有効性がRCTにより認められており、より細胞毒性の弱いシクロフォスファミド(CPA)でもほぼ同様の効果が示されている。一方、最近はカルシニューリン阻害薬であるシクロスポリン(CPA)の有効性がRCTで示され、再発率は高いもののCPAとほぼ同様の効果を示す薬剤と考えられている。もう1種類の免疫抑制薬としてプリン代謝拮抗薬があり、現在、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)が移植などで用いられているが、膜性腎症における効果はCPAなどより劣るとされた。

わが国における治療と診療指針作成
わが国では、膜性腎症が難治性ネフローゼ症候群の最も重要な疾患と位置づけられ、1990年に研究班で難治性ネフローゼ症候群の治療研究が取り上げられて以来、その治療が中心議題とされてきた。・・・1990年と1994年の全国調査およびその後継続された追跡調査によれば、ネフローゼ症候群を呈する膜性腎症の腎死率は10年で15%, 20年で40%である。・・・2002年に作成された難治性ネフローゼ症候群の診療指針(成人)では、ネフローゼ症候群を呈する膜性腎症に対して、まずステロイド経口薬単独で治療を行い、1か月後にステロイド抵抗性すなわち不完全寛解I型(尿蛋白1g/day以下)に至らない場合、免疫抑制薬を併用することが示された。また免疫抑制薬に関しては、欧米のRCTの結果を受けて、CPA, CyA, そしてわが国でステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に適応が認められているプリン代謝拮抗薬のミゾリビン(MZR)が選択薬とされた。さらに、尿蛋白抑制効果もかね、補助療法としてARBやACEIなどの降圧薬、スタチンなどの脂質異常改善薬、抗凝固薬および抗血小板薬が投与可能な薬剤となった。


新しい診療指針

2002年に発表された診療指針は十分なエビデンスによるものとはいえなかった。・・・2004年以降、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群を呈する膜性腎症において、プレドニゾロン(PSL)とCyAおよびPSLとMZR併用療法それぞれについて、免疫抑制薬を1日一括投与と分割投与で群分けするRCTが行われた。・・・

表 膜性腎症の診療指針
・初期治療
プレドニゾロン0.6-0.8mg/kg/day相当を投与する
・ステロイド抵抗性
ステロイドで4週以上治療しても、完全寛解あるいは不完全寛解I型(尿蛋白1g/day未満)に至らない場合はステロイド抵抗性として免疫抑制薬、シクロスポリン2.0-3.0mg/kg/day, またはミゾリビン150mg/day, またはシクロフォスファミド50-100mg/dayの併用を考慮する。
・補助療法
1) 高血圧を呈する症例ではアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用を考慮する。
2) 脂質異常症に対して、HMG-CoA還元酵素阻害薬やエゼチミブの投与を考慮する。
3) 動静脈血栓形成の恐れに対しては抗凝固薬を考慮する。

免疫抑制療法のステロイドに関して、PSL0.6~0.8mg/kg (標準体重)を単独で経口投与することが妥当とされているが、年齢や合併症の有無を考慮して増減を図る必要がある。そのうえで、1か月以内に不完全寛解I型以上の改善がみられない場合には、ステロイド抵抗性として免疫抑制薬の併用を原則とする。免疫抑制薬としては、保険適応上、CyAまたはMZRを用い、これらで効果が得られない場合には、CPAの使用も考慮される。CyAについては、2~3mg/kg標準体重を朝食前一括投与し、服用後2時間目の血中濃度(C2)が600〜900mg/mlに調整することが有効とされた。使用期間については、副作用がない限り6か月間投与し、効果が得られたら、原則として1年は使用を考える。MZBについては、RCTにおいて一括投与と分割投与の有意差は明らかでなかった。また、血中濃度の測定は普及しておらず、指針には示されないが、最大血中濃度 (Cmax)1.1μg/ml以上になった症例のすべてで完全寛解となった。使用期間についてはRCTの2年間の投与で特に副作用の発現はなく、効果の遅く現れる症例もみられることから、副作用のない限り2年間の使用が必要と思われる。なお、MZRは主として腎排泄性であり、腎機能低下例に関してはこの点を考慮して減量を考えなければならない。
補助療法については、2002年の指針とほぼ同様であるが、膜性腎症は高齢者に発症してネフローゼ症候群を呈するので、高血圧症、脂質異常症、動静脈血栓症などを併発しやすい。したがって、これらの合併症により全身状態の悪化や腎障害の進行の恐れがある場合には、ステロイドや免疫抑制薬の使用の有無にかかわらず、降圧薬、脂質異常改善薬、抗凝固薬などの併用が必要となる。特に降圧薬について、ACEIやARBは糸球体血圧の低下とともに、抗酸化作用や抗炎症作用もあるといわれており、その積極的な使用が勧められる。・・・また脂質異常改善薬として、スタチンには血清LDLコレステロールの低下のほか、ARBなどと同様の多面的効果が期待できるので、投与を考慮すべきであるが、横紋筋融解症をきたす恐れがあり、薬剤によってはCyAとの相互作用から併用が禁忌である。・・・以下略

診療指針における問題点と今後の課題
 問題点は多い。まず、ステロイド抵抗性、難治性、さらに再発を繰り返すような長期治療依存型ネフローゼ症候群において、ステロイドや免疫抑制薬長期使用の可否が解決されていない。CPAについては、生殖抑制や発癌の危険性を考慮して、わが国では3か月を限度とすることが一般的となっている。また、MZBでは概ね2年程度の使用が今回の指針で示された。一方CyAでは高血圧やときに神経障害を誘発する恐れがあるほか、尿細管障害、細動脈硬化、間質線維化など腎基質病変の発生も考慮しなければならないが、長期使用例が現実には少なくない。この点について、投与量の多い移植の際などには副作用の頻度が高いが、今回の指針でも示されたように、2〜3mg/kgの投与量でC2が600~900 ng/ml程度の範囲であれば、2年間の使用は可能であるとの専門家によるコンセンサスがある。しかし、それ以上の期間に関しての使用は今後の課題であり、現時点では、腎機能の定期的な測定と場合によっては腎生検を行うことで監視する必要があろう。生命予後に影響するような副作用があるにもかかわらず、RCTにおける有効性と薬価などの点から、欧米ではCPAなどのアルキル化薬を第一選択薬として取り上げる傾向にあり、KDIGOにおける診療指針案でもその方向性が示されている。・・・以下略。
膜性腎症は高齢者に多く、高血圧や高脂血症に基づく動脈硬化、動静脈血栓症併発の頻度が高いといわれる。・・・・中略・・・・また、γグロブリン大量療法が有効との研究があるが、本症における感染症併発予防も兼ねてこの治療法の有効性を検証する必要がある。・・・・中略・・・・最近、MホスホリパーゼA2受容体が膜性腎症の抗原として注目されている。一方、特発性膜性腎症といえども均一な病態とは言えず、異なる病因が含まれる可能性がある。・・・・以下略・・・・

膜性腎症についてのお話

膜性腎症の病理
・・・腎臓病雑誌より抜粋・・・

膜性腎症とは、腎糸球体係蹄の上皮側に免疫複合体が沈着することにより惹起される糸球体疾患であり、種々の程度で基底膜の肥厚を示すことを組織的特徴とする。特発性膜性腎症の原因抗原を、長い間多くの研究者がさぐり続けてきた。これまでmegalinやneutral endopeptidase(NEP)の研究報告がなされたが、成人の特発性膜性腎症の発症に関与しているとする知見には至っていない。最近、ヒトの特発性膜性腎症の多くに足細胞に局在するphospholipase A2 receptor (PLA2R)と反応するIgG分画があることが報告され、原因抗原として大きな注目を集めている。・・・中略・・・ 膜性腎症の病理像を振り返り、臨床像や経過との関連のもとに再考察を加えたい。

特発性膜性腎症の病理組織像
1. 光顕像と電顕像の対比
膜性腎症の腎糸球体基底膜(GBM)の上皮側に免疫沈着物が出現することが本症の基本病変であるが、それに伴う基底膜の反応性変化が加わり、基底膜は種々の程度の肥厚を示す。本症の病理に関しては、EhennrichとChurgのStage分類が多く用いられている。この分類は電顕所見を基にしたものであるが、ここでは光顕像と対比させて述べる。
Stage 1:本症の初期においては糸球体基底膜の上皮下に高電子密度の沈着物(deposit)を認めるが、多くは小型であり基底膜の反応性変化も乏しい。そのため光顕上は、HE染色やPAS染色では基底膜の肥厚として捉え難く、微小変化群として扱われやすい。このような時期でも、Masson染色で赤橙色のdepositとして見出せることがある。
Stage II:depositが基底膜上皮下に多く分布するようになり、基底膜緻密層から伸びた突起がdeposit間に認められる。光顕的には明らかな基底膜の肥厚として認められる。基底膜のdeposit間の突起はPAM染色でも染色され、スパイク(spike)と呼ばれ、本症の光顕的特徴の一つにあげられる。また、PAM染色での正接方向にきれた基底膜のdeposit部が銀に染まらないため欠損部として描出され、bubbling(泡つぶ状変化)を示す。
Stage III: depositが新生基底膜で包み込まれ、depositは基底膜内に見られるようになり、電子密度が低下し、顆粒状あるいは空胞状になる。このように基底膜内にdepositが取り込まれlucentになっていく状態をwash outと呼ぶ。基底膜はさらに肥厚し、光顕的にPAM染色でbubblingに加えて、鎖状の変化や二重化像を示す。
Stage IV: depositはほとんど消失し、わずかにlucentあるいは空胞状のものが散見される程度となる。基底膜の肥厚は持続するが、経過とともに経度となる。Depositの新たな供給がなければ、基底膜は修復され正常化していく。光顕上は不規則な肥厚を伴い、やがて正常の基底膜の厚さを示すようになる。各Stageのdepositが混在することも多く、免疫複合体の持続的供給を示唆する。

2. 蛍光抗体法
蛍光抗体法ではIgG3およびC3がびまん性に係蹄壁に沿って顆粒状に沈着する。感染症や膠原病などによる続発性膜性腎症では、IgG、C3以外にもIgA、IgM、C1q、C4などが沈着することがある。なかでも特にC1qの沈着はSLEなどの続発性膜性腎症を示唆する所見である。IgGサブクラス染色は、特発性と続発性の鑑別にしばしば有用である。免疫複合体を形成するIgGのサブクラスとしては、特発性膜性腎症ではIgG4が優位となることが多い。膜性腎症はIgG4関連疾患であるという見方もある。腫瘍関連膜性膜性腎症では、IgG4に加えてIgG1,IgG2が有意に高い陽性率を示し、また、ブシラミン関連ではIgG4に加えてIgG2,IgG3が陽性を示す傾向があると報告されている。

特発性膜性腎症におけるdepositの経時的変化
  ヒトの膜性腎症の基底膜病変がどのような時間経過で変化していくのかについての報告は少ない。・・・
1. ネフローゼ症候群例
特発性ネフローゼ症候群例のStageの経時的変化を図4に示した。初回生検時のネフローゼ症候群例の経時的変化を図に示した。初回生検時のネフローゼ症候群の時期にすでにStageII以降のものも多い。個々のdense depositがwash outし始めるStageIIIに至るまでの期間は1年から2年と思われる。蛋白尿が1日0.5g以下となるまでの期間は、早い例では発症から1年であるが、5年以上を経過してもなお中等度の蛋白尿(0.5g〜3.5g/day)が持続する症例もある。この場合、古いdepositに新しいdepositが混在する。形態的に糸球体基底膜が正常化するには、多くの場合4,5年以上が必要と思われる。ステロイドなどの薬剤治療はこのようなdepositの経時的変化を加速させると考えられる。
2. 非ネフローゼ症候群例
膜性腎症のなかには軽度の尿異常のみで経過する症例も含まれる。このような非ネフレーゼ型の膜性腎症をみると、小型のdepositのままで経時的に変化し、基底膜の肥厚を示さない軽症型の膜性腎症が多い。Depositが小さいほど寛解導入までの期間が短いとする報告もあり、turn overの期間も短いと思われる。

続発性膜性腎症におけるdepositの経時的変化
  続発性膜性腎症は特発性とは異なる病理像を示す場合が多い。続発性膜性腎症については他稿で詳しく述べられているので、ここでは病理組織的経過と鑑別点について簡単に触れる。膜性ループス腎炎は上皮下のほかに、内皮下やメサンギウムにdepoositを伴う事が多い。また、大小不規則な形のdepositを示し、経時的にもdepositが空胞状になるよりも顆粒状化することが多い。金剤、D-penicillamineなどの薬剤や悪性腫瘍による膜性腎症では、depositは小型で、生検時には早期(stage I)のdepositであることが多い。薬剤中止や腫瘍摘出により、速やかに寛解に至る。その場合も特発性と同様の経時的変化を示すが、そのサイクルは短いと考えられる。ウイルス性肝炎では免疫複合体沈着型の糸球体腎炎を呈することがあり、B型C型ウイルスのいずれも膜性腎症を呈しうる。上皮下のdepositの形態は多彩であり、経時的変化はメサンギウム増殖やメサンギウム間入などで修飾され、膜性増殖性腎炎との鑑別が困難なことも多い。

他疾患に合併する膜性腎症
特発性膜性腎症に他の腎疾患が合併し診断を困難にすることはしばしば経験する。ここでは主な合併例を示す。
1. 糖尿病性腎症と膜性腎症
膜性腎症を合併する腎疾患としては糖尿病性腎症が最も多いと考えられる。糖尿病早期のネフローゼ症候群では膜性腎症の合併を鑑別する必要がある。糖尿病に合併した膜性腎症の経時的変化をみると、発症時には肥厚した基底膜上にdense depositが認められ、経過するとdepositはless denseとなり、新生基底膜を伴うようになるが、このような経時的変化は本来の糖尿病性変化である肥厚した緻密層には及ばないことが多い。
2. IgA腎症と膜性腎症
IgA腎症に膜性腎症が合併する症例もしばしば見られる。メサンギウム増殖を背景にして種々の程度で基底膜の肥厚を伴ってくる。電顕的には上皮下とメサンギウムにdepositを有することから、二次性の膜性腎症との鑑別が問題となる。蛍光抗体法でメサンギウム沈着がIgA優位であることと、臨床的事項が鑑別上のポイントになる。
3. 半月体形成性腎炎と膜性腎症
細胞性半月体の形成が膜性腎症に出現することもあり、臨床的には急速に進行していく。両者の合併には3つのタイプがある。第1のタイプは抗GBM抗体腎炎との合併であり、蛍光抗体法ではIgGのGBMに沿った線状の沈着にIgGとC3の顆粒状の沈着を示す。第2のタイプはANCA関連腎炎との合併である。しかし、単なる合併ではなく、係蹄壁のdepositの中にmyeloperoxidase(MPO)が局在する症例も含まれ、MPO-ANCA関連腎炎におけるMPOが続発性膜性腎症の原因となる可能性が示唆される。第3のタイプは上記2疾患(抗GBM抗体型腎炎とANCA関連腎炎)がない場合であり、半月体の形成機序は個々の症例で異なると考えられる。

4. 菲薄基底膜病と膜性腎症
菲薄基底膜病に膜性腎症が合併することがあり、びまん性に菲薄化した基底膜上に小型のdepositが連続性に、あるいは散在性に見られる。臨床的にはネフローゼ症候群を呈することもあるが、軽度蛋白尿と血尿で経過することが多い。光顕的には微小変化に含まれることが多く、確定は蛍光抗体法と電顕による検索が必要です。

膜性腎症の組織診断上の問題点
  膜性腎症は糸球体基底膜の上皮側に免疫複合物が沈着することにより、基底膜の肥厚を示す糸球体腎炎であり、典型例では診断は容易なことが多い。しかも、蛍光抗体法や電顕による検索が行われ、鑑別診断上問題になることは少ない。むしろ、一次性と二次性膜性腎症との鑑別、あるいは、他疾患の合併が診断上の問題となっている。この点についてはすでに述べたが、ここでは実際の診断に際しての問題点について記す。
1. 糸球体基底膜の肥厚が明らかでない場合。
早期の病変では、光顕切片のみでは診断が困難なことが多く、蛍光抗体法での免疫染色で確認ができない場合には注意を要する。このような場合でも、Masson染色での上皮下のdepositやPAM染色でのbubblingを観察できることもある。臨床的には、非ネフローゼ型の蛋白尿の症例や二次性膜性腎症が含まれることが多い。
2. 増殖、硬化像を伴う場合
増殖性変化を伴う膜性腎症では、二次性膜性腎症の可能性を検索すべきである。ループス腎炎ではメサンギウム増殖や管内増殖をともなう。肝炎ウイルス(HBV/HCV)関連腎炎では膜性腎症と膜性増殖性腎炎(以下, MPGN)のいずれの像もとりうることから、両者の鑑別には電顕検索が望まれる。
また、循環障害による糸球体硬化病変が出現し、MPGN類似の像を示すこともあり、注意を要する。さらに前述のように他疾患が合併し、糸球体基底膜の肥厚に加え増殖や硬化像を伴い、診断を困難にすることもある。
3. 半月体を伴う場合
半月体を伴う場合には、MPGNあるいはループス腎炎などの二次性膜性腎症との鑑別を要する。また前述のように、半月体形成性腎炎との合併も考慮に入れて検討する必要がある。
・・・・・以下略

診療時間変更のお知らせ

これまで地域の皆様には大変ご不便をおかけ致しましたが、本年11月6日(火)より、火曜日の午前診を再開致します。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

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院長
神戸市垂水区の佐々木内科医院では「あなたの腎臓を守りたい。地域のホームドクターへ」をモットーに腎臓専門医として地域のみな様の健康を守りたいと考えています。

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