甲状腺についての話題

 甲状腺機能は通常の定期健診ではほとんどチェックされることはありません。寒さに弱くなったり、高脂血症、肝機能異常を示すこともあります。診断には、甲状腺機能検査が必要です。


亜急性甲状腺炎

定義 概念

ウイルス感染症によると考えられている甲状腺の炎症のため、甲状腺の腫大と強い痛みを伴う疾患である。非化膿性甲状腺炎、巨細胞性甲状腺炎、肉芽腫性甲状腺炎、または本症の発表者の名前からde Quervain thyroiditisなどの多くの異なった名称が使われてきたが、現在は亜急性甲状腺炎という名前が一般に用いられている。40-50代に多く、男性より女性患者がはるかに多い。慢性甲状腺炎に移行することはない。一度罹患すると免疫ができるため、通常二度と罹患することはない。

病理

 甲状腺濾胞構造の破壊、間質への単核球浸潤、多核巨細胞の出現、コロイド漏出、浮腫などの特徴的病変を示す。

病因

 しばしば上気道感染が先行し、ウイルス感染によると考えられているが、局所からのウイルス同定は成功していない。春と秋に流行のピークを示すことが多い。HLABw35との関連が報告され、患者側の素因も関与していると考えられる。

臨床症状

 典型的な場合には、上気道炎様の前駆症状に続いて悪寒を伴う38℃に及ぶ発熱があり、前頸部に自発痛および圧痛、嚥下痛が出現する。痛みは下顎や耳介に放散し、嚥下により増強する。発熱、倦怠感、筋肉痛などの全身症状を伴うことが多い。数日から数週間の経過で、甲状腺の痛みが一側から他側に移動することもある。かたい圧痛のある甲状腺腫を触れる。
 
甲状腺の組織破壊により貯蔵されていた甲状腺ホルモンが血中に放出されるため(破壊性甲状腺炎)、活動期には動悸、発汗、手指振戦などの甲状腺中毒症状が出現する。3−6週間持続した後中毒症状は消失し、一部の症例では機能低下期を経て、回復する。全経過は
4−6か月であり、未治療でも自然回復することが多い。約5%の症例で永続的な機能低下となる。甲状腺ホルモン、TSH、甲状腺放射性ヨード接種率などの経過は無痛性甲状腺炎と同様である。

検査成績
 CRPは高値、白血球は正常から軽度増加にとどまる。血中甲状腺ホルモンが増加し、TSHは低下する。無痛性甲状腺炎と同様、血中T3/T4比は20以下となる。血中サイログロブリン濃度は濾胞の破壊を反映して上昇する。抗甲状腺自己抗体、抗TSH抗体は、一般に陰性である。甲状腺超音波検査では、罹患部は著明な低エコーを呈し、血流も低下する。甲状腺放射性ヨード摂取率は、濾胞の破壊のため著明に低下する。GOT,GPTが上昇する例もある。活動期に引き続いて甲状腺ホルモンは低下し、ときに機能低下の時期を経て正常に復する。

診断
 発熱、倦怠感などの全身症状、圧痛をともなう硬い甲状腺腫、CRP高値、血沈亢進、白血球正常、甲状腺ホルモン上昇、サイログロブリン高値、甲状腺ヨード摂取率の著明な低下などがあれば、診断は容易である。急性化膿性甲状腺炎、甲状腺内出血なども甲状腺の圧痛をきたすが、上記の点から鑑別は難しくない。無痛性甲状腺炎とは甲状腺の疼痛の有無で区別できる。慢性甲状腺炎の急性増悪とよばれている状態は亜急性甲状腺炎によくにているが、急性増悪では以前から慢性甲状腺炎による甲状腺腫があること、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体が陽性であることから鑑別可能である。

治療
 発熱や疼痛が軽度の時は、サリチル酸や他の非ステロイド性消炎鎮痛薬を用いる。重症例では副腎皮質ステロイド剤を用いる。副腎皮質ステロイド剤は非常に有効で、predonisolone20-30mg/dayの使用により痛みは数日以内に劇的に改善する。Predonisoloneの漸減はゆっくりおこない、1-2か月投与した後に、中止する。早急に中止すると、症状が再燃しやすい。圧痛、甲状腺腫が消失し、CRP、血沈、血中サイログロブリン値などが正常化すれば、治癒したと判定してよい。甲状腺放射性ヨード摂取率はTSHが抑制されている期間は低値であるが、TSHが上昇するにつれ回復し、機能低下を示す時期は高値を示す。





急性化膿性甲状腺炎

定義 概念

細菌感染による起こる甲状腺の急性炎症で、まれな疾患である。口腔内の細菌が下咽頭梨状窩瘻(下咽頭と甲状腺を結ぶ先天性の内瘻)を通じ、甲状腺周囲または甲状腺内に達し炎症を起こすもので、圧倒的に小児、若年者に多い。

病因
 第三鰓弓が遺残して咽頭の梨状窩から甲状腺に瘻管をつくている人に起こる、起因菌としては、黄色ブドウ球菌が成人例の30%を占める。小児の初回感染や成人の再発例では、連鎖球菌や嫌気性菌が原因となる。

臨床症状
 通常罹患側は左側である。皮膚の発赤、熱感を伴う強い圧痛、腫脹を左側前頸部に認める。痛みは耳や下顎に放散する。発熱などの全身症状を伴うことも多い。膿瘍を形成すると前頸部の腫脹に波動を認める。

検査成績
 白血球増加(核は左方移動)、CRP増加、赤沈の著明な亢進を認める。甲状腺の破壊が広範な範囲な例ではまれに甲状腺ホルモンが増加することもあるが、通常は甲状腺ホルモンは正常である。甲状腺シンチグラフィーでは罹患部は欠損像となるが、他は正常の取り込みを示す。超音波検査では、種々のエコー輝度の混在した辺縁不整の腫瘤像を呈する。

診断
 甲状腺腫瘤を穿刺し、内容液の細菌培養とグラム染色を行う。炎症が消退した後、下咽頭食堂造影X線検査を行い、感染経路である下咽頭梨状窩の存在を証明する。

治療
 急性期には抗生物質を投与する。膿瘍を形成している場合には切開排膿が必要である。根治治療には下咽頭梨状窩瘻管を除去することが必要であり、急性期がすぎてから瘻管切除術を行う。

腹診:心下痞硬について

(2)心下痞硬
自覚的に心窩部につかえる感じのあることである。そのような痞える感じがあって、そこを按ずると(押すと)、抵抗が感じとられ、さらに按圧すると、痛みまたは不快感を訴えるのを、心下痞硬という。程度の差はいろいろであるが、諸種の柴胡剤には、みなこれが認められ、また他の少陽病の薬方でも、証の一つとしてこれが認められることが多い。陰証では、心下痞硬を呈する場合は比較的少ないのであるが、桂枝人参湯証のように「傷寒論」の条文にも心下痞硬が明記され、実際の臨床でもこれを認めることが多い薬方証もあるし、乾姜人参半夏丸の証のように、腹部全体は軟弱または無力であるにもかかわらず、心窩部のみに、強い痞硬を認めるような例もある。
著書「薬徴」において、人参の主治を「心下痞硬」であるとしている。「類聚方」の中では、人参が配された薬方のあとには、必ず「為則按ずるに、心下痞硬の証あるべし」と記されているのはほぼ当を得ているようである。

漢方の診療; 腹診について

腹診について(成書より抜粋・一部改編)

(1)腹力
腹診で最も大切なのは、腹力が「実」か「虚実間」か、という点を決定することである。そのためには、手掌全体で病者の腹部全体を軽く按じ、あるいは重く按じて、両者の
腹力を感じ取るのである。その方法としては、臍の両脇を上から下に、または下から上に按じ、次いで臍の上下を右から左に、左から右に按じて診察する方法とか、あるいは臍を出発点として、回盲部から上方に向かって、そこから右に水平に転じるというように、平仮名の「の」の字の形に押さながら軽按して腹力を感じ取る方法など、人によっていろいろなやり方があるが、要は、万遍なく腹部全体を軽按し、あるいは重按して、腹力を決定することである。腹力の判断基準:(基準)腹力中等度・・・・軽按しても重按しても、腹力が有りすぎもせず、無さすぎもせずというもの、これを虚実間ないし、やや実証に傾いている腹力とみなす。これを基準として「実」の方へは、@腹力中等度よりわずかに実 A中等度よりわずかに実 Bやや実 C実 D強実、また「虚」の方へは E腹力中等度よりわずかに実 F中等度よりやや軟 Gやや軟 H軟 I軟弱にして無力、の各々五段階、都合十段階に分けて記録している。
腹力中等度というのは、健康人の標準的な腹力であるとともに、病的状態である虚実間の腹力としても感じられることがあり、実際の臨床の場では、この腹力中等度(たとえば小柴胡湯証など)、中等度よりわずかに軟(たとえば柴胡桂枝湯証)、中等度よりやや軟(たとえば柴胡桂姜湯証)の三者が最も頻繁に出現するよう・・・・なお腹直筋が緊張しているために、真の腹力は虚状であるにもかかわらず、一見、実証のように感じられ、誤診の原因になる場合がある。これを防ぐためには、腹診のときには、必ず腹直筋の外縁の部分(副正中線)で、腹底に向かって三指を圧入し、その手ごたえをみることが必要である。この場合、三指に感じられる腹力が、全体として感じられる腹力よりも、いちじるしく弱い場合には、全体として感じられる腹力は、見かけの実の腹力であって、本当は虚証の腹力であるとみなすべきである。

漢方の診療について

脈診について

(17)虚(きょ)脈が充実していなくて、按圧すると、内容が空虚な感じのする脈状。虚の徴候とする。「虚」は「弱」に似るが、「弱」は脈管の緊張度を主とし、「虚」は脈管の内容を主としている。
(18)滑(かつ)珠玉が指下を流れていくような感じの脈状。裏熱の徴候とする。
(19)濇(しょく)または渋(しゅう)血流が円滑でなく、粘着凝滞するような感じがある脈状。これを虚の徴候とする。またときに、精気が亡脱している徴候とする。すなわち「傷寒、若しくは吐し、若しくは下して後解せず、脈弦なる者は生き、濇なるものは死す・・・・」(傷寒論)と。


追記 当院では患者様の病状に応じて、漢方治療を導入しております。

漢方医学について

脈診について

(13)弱(じゃく)軟弱で力のないような感じのする脈。虚の徴候とする。

(14)促(そく)脈の来方が急で、その拍動が迫るような感じの脈状。表邪がまだ解しきっていないときの脈候とする。すなわち「傷寒論」に「太陽病、之を下して後、脈促、胸満する者は、桂枝去芍薬湯之を主る」と。また「太陽病、桂枝の証・・・脈促なる者は、表未だ解せざる也。喘して汗出ずる者は、葛根黄連黄今湯之を主る」と。

(15)弦(げん)緊張した弓ずるに触れたような感じの脈状。原則的には少陽の脈候とする。「弦」は「緊」に似ているが、「緊」は攣急の程度が「弦」より強く、「弦」は硬度が「緊」より強いとされている。

(16)実(じつ)脈が充実して力があり、按圧すると、指下に強い抵抗を感じる脈状。邪の実する徴候。

漢方の診療

脈候

(7) 遅(ち)緩慢で徐々にくる拍動。原則的に虚候。しかし陽実の場合に、この脈を現すことがある。このときは「実」にして「遅」である。

(8) 洪(こう)幅が広く、あふれるような感じの脈。熱性が甚だしい徴候とする。しかし「洪大」で力がないものが、ときにある。これは虚候であり、多くの場合、悪い徴候である。

(9) 大「だい」容積、形体がともに大きな脈。多くは「洪」に伴う。

(10) 小(しょう)容積、形体ともに小さな脈。「細」「小」と相称する場合が多い。

(11)細(さい)糸線に触れるような脈。小脈よりは更に小で、微脈よりはやや力がある脈状。陰証で裏寒の徴候とする。

(12)微(び)細であって力がなく、ようやく触れるような脈状。虚証の徴候とする。「傷寒論」では微脈を少陰の時期の脈としている。しかし、ときに微にして沈、微浮を実効とする場合がある。この場合は脈の力があるにもかかわらず、深く伏して触れにくい脈であって、内に病邪が結実する徴候である。


追記 脈の性状の記載は西洋医学よりも精細にして、興味深いと思われます。漢方医学3000年の歴史を感じます。

当院では漢方治療を導入しております。

漢方医学の診察について

脈診

(6) 疾(しつ)急疾で、指頭を弾くような脈。熱勢が盛んな徴候。「疾」は「数」に似ているが、「数」は拍数で、疾はその形状で現しているのである。

(7) 遅(ち)緩慢で徐々にくる拍動。原則的に虚候。しかし陽実の場合に、この脈を現すことがある。このときは「実」にして「遅」である。


追記: 当院では患者さまの病状に応じて、漢方治療を応用しております。ご希望の方は、ご遠慮なくお申し出ください。

漢方の治療 脈診について

(5)数(さく) 頻脈のことで、脈拍数の多い脈。これを有熱の候とする。また、「滑」で「数」であれば陽明の候とする。すなわち「脈滑にして数なるものは、・・・・大承気湯に宜し」(「傷寒論」陽明病篇)と。また陰証で数脈を呈するものがあり、虚実ともにこの脈を呈する場合がある。一般的にいって数脈を呈する場合には、病の進行する勢いが強いことを示していることが多いから、数脈が持続する場合には警戒の要がある。

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院長
神戸市垂水区の佐々木内科医院では「あなたの腎臓を守りたい。地域のホームドクターへ」をモットーに腎臓専門医として地域のみな様の健康を守りたいと考えています。

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